花の家
 恐る恐る瞼を開けると、先生のいつもの愛想のない顔があった。

 そっと触れてみる。

 触れた。

 痩せた頬を撫でると、銀縁の眼鏡が指先に当たる。

 ああ、現実だ、と思うと涙がこぼれた。

 安心して、よかったと思って、涙が止まらなかった。

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