花の家
「確かに俺は朝、お前を呼び出したが……今、話をしたいのは、お前の方に見えるな」

 それはそうだろう。話し合うべき事態が起きたのだ。

 アンタだって見たじゃないか、と鈴は思う。

「香里が」

 花開きそうだ、と鈴は言った。

「根拠は。異界の森に誘われたからか」

 大したことでもないように言う朝蜘に鈴目は焦れる。

「それだけじゃない、分からないのか。甘い匂いが、だだ漏れだ」

 ここ数日、日増しに薫りは強くなっていた。

 分からない筈がない、と鈴が語気を強めて言うと、意外にも朝蜘は驚いた顔をする。

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