花の家
「そうか、驚いたな。蜜虫は違うと言うわけだ」

「俺は蜜虫じゃない」

 朝蜘の言葉に、鈴目の体は目に見えて強ばった。

 到底、認め得ないことを言われた、という風に見える。

「そう尖るな。蜜虫だから蜜の匂いが分かるんだろう。現に俺には分からなかった。なるほど、今度、注意深く見てみることにしよう」

 朝蜘が匂いに気付いていなかったことは、鈴に少なからず動揺を与えた。

 自分の見たくなかった側面を見せられたせいだ。

 俺は、蜜虫じゃない、と口の中で呟いて、気を持ち直そうとする。

「で、蜂須賀。仮に館花がもうすぐ開花するのだとして、俺にどうしろと言うんだ?」

 鈴の動揺になど興味がない、とばかりに朝蜘は尋ねた。

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