花の家
『奥の子どもが、花の娘ですか』

 朝蜘は注意深く、何かを見極めるように目を細めて、香里を見る。

『そうです、この子が館花のむすめです』

 おばさんが冴え冴えとした声で言った。

いつもの、柔和な顔をしておやつを出してくれる女性とは別人のようだった。

『……成る程、確かに花だ』

 その朝蜘の呟きに、おばさんは安堵したように見える。

認めてもらえたことに、何か重大な意味があるような。


『だが、開花の儀は取り止めた方がよさそうですね』

 さっきの安堵とは一転、続いたその朝蜘の言葉に、場は凍りついた。

 どういうことだ、と鈴の横で父が問いを発する。

 この人は誰だろう、本当に父だろうか。鈴目は怯える。

 その日は誰もかれもが他人に見えた。

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