花の家
『では、どうするつもりなのだね。君の話では、いずれは花開いてしまうのだろう』

 役場の御爺が、両者を取りなすような穏やかな声音で問い掛ける。

 おばさんが、不安げに香里の頬を撫でた。
 
 丸みのある柔らかな頬、化粧の下からでも、ほんのりと赤い。

 食い散らかされる、という言葉が俄に不穏なものとして胸に迫ってくる。

『初代のときと同じです。闘うほかない』

 闘う? 何と? 虫と?

 虫とはなんだ。鈴には理解できない。

『そうとしても、もう少し虫喰いが育たねば話にならない……』

 ちらりと朝蜘の視線が自分に向いた気がして、鈴はうつむく。

 蜜虫も虫喰いも分からない。

その話の見えなさが恐ろしい。

『それまでは、開かぬよう蕾を糸で括っておきましょう』

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