花の家
「姉さん、体調悪いなら言えよ? 迎えに来るから」
 
 教室に着くなり、多郎は言った。

 この頃の、心ここにあらずといった状態に気付いていたらしい。

「大丈夫だよ、私元気だから。昨日だって、ちゃんと寝たし」

 多郎の心配そうな顔を見上げて、香里は笑う。

 それにしても小柄な香里に比べて、多郎の背の高いこと。
 
 お母さんも、お父さんも高くない筈なのに、誰に似たんだろう。突然変異というやつかしらと首をかしげる。

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