花の家
「僕の名前、覚えてくれたんだね!」

 この転入生が何をそんなに喜んでいるのか、香里には上手く理解できなくて戸惑う。

 う、うん、と戸惑いながら控えめな返事をして、やっと揚羽が家にいるという状況を把握し始めた。

 そして、自分が寝起きであり、パジャマを着ており、髪もぼさぼさで、顔も洗っていないということも思い出す。

 堪らず、頭から布団をかぶった。

「あれ、どうしたの、香里。また具合が悪くなったの?」

 香里の行動が分からないのだろう、顔を覗き込もうとする揚羽に香里は心の中で悲鳴を上げる。

 み、見ないでえええっ

 弟や女友達なら兎も角、昨日会ったばかりの美少年な転入生に見られるのはつらい。

 羞恥に、布団を握る手にも力がこもった。
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