花の家
「出たわね、香里お得意のネガティヴ思考」

「べつに……ネガティヴっていうか、現実ありのままを見てるだけだけど」

 正直な話、自分には人に自慢できる部分が一つもない、と香里は思う。

 低い身長と低い鼻。

 口下手で、楽しい話なんて出来たことがないし。

 運動神経は驚かれるほど、ひどい。

 それでいて、特に勉強が出来るわけでもない。それどころか、数学なんて人並み以下なのである。

「あんた、蜂須賀も女子に人気あんのよ? 美形に愛されて、自信持ちなさいよ」

「鈴は、面倒見が良いから……」

 愛されているとか、そういうのではないのだと思う。

 昔からの仲だから見捨てるわけにいかないだけで、わたしは、それに甘えているのだと香里は理解していた。

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