花の家
「僕、あの智恵子ちゃんって子と授業が終わった後、急いで来たんだけど……もう君、ここに居たじゃないか」

 揚羽の視線は、どこか挑戦的に多郎の頬を滑る。

「今日は学校、休んだの?」

 くすくすと揚羽は笑う。

 何を考えているのか分からない、捉え所のない笑い方だ。

 多郎は肯定も否定もせず、感情を閉ざした眼で、揚羽を見下ろす。

「香里が心配だから休んだの? 君って、ただの弟だよね」

 揚羽の軽い口調に、多郎の視線に臆したところは見られない。

 それどころか、反応を楽しむように、その高い位置にある顔を覗き込んでいる。

「……それって気持ち悪くない?」

「俺が気持ち悪かろうが、貴方には関係ないと思いますけど?」

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