花の家
 多郎は温度のない声で言って、絡んでくる揚羽を切って捨てた。

 しかし、そんな多郎の態度にも、揚羽は怯む様子なく笑ってみせる。

「んふふ、そうだね。関係ない」

 その予想外の反応に、多郎の方が一歩、後退った。

 得体の知れなさが不穏だ。

「香里の周りで、誰が何しようが関係ないよ。何をしたって、これから起こることは変わらないんだもの」

 揚羽はゆっくりと襖を撫でる。その向こうにいる香里を撫でるように。

「今、香里が思ってる夢と現は反転するんだ。ぜんぶ、元に戻る」

 それが楽しくて仕方がない、という風に揚羽は笑う。

「香里は、元々、あっちの世界のものなんだから」

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