花の家
 鈴の方が、姉である自分より多郎のことに詳しいのじゃないか、と思うことがある。

 男の子と女の子の差と言うやつなんだろうか。ちょっと悔しい。

「いや、そうじゃなくてさ……」

 鈴が説明しようとするのと、教室後ろの扉が開くのは、ほぼ同時だった。

「姉さん……」

「ほら、わざわざ行かなくたって、向こうが、お前の弁当届けに来るってこと」

 鴨居に頭をぶつけるくらいの長身の手には、ピンクの小さなお弁当包みが握られている。

 に、似合わない。

「良かったわね、出前届いて」

 しらっと言った智恵子の台詞に、香里はいたたまれなくなって顔を覆った。

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