花の家
「ごめんね、ごめんね、多郎ちゃん。恥ずかしかったよね?」

 多郎が、男友達の前で少女趣味の弁当を取り出した心境を思うと、香里は謝らずにはいられない。

「こ、今度から間違えても平気なように、私も青っぽい包みにしようかなっ」

「……姉さん、それはややこしくなって、間違う頻度が増えるだけだからよそう」

 頭が痛い、と言う風に多郎は眉間を指で押さえる。

 何だか、あの仕草、癖みたいになっちゃってるなあ……。

 若いみそらで、皺がとれなくなったら私のせいだ、と香里は申し訳なく思った。

「お前も、ここで飯食ってけよ」

 わざわざ戻るの大変だろ、と鈴は多郎を気安く誘う。

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