花の家

「香里の隣に座れよ。仲直りにさ」

　鈴は、兄貴分らしい爽やかな笑みを浮かべた。

親切を装って、暗に揚羽と香里の間に座って会話を遮れ、と命令している。

子どもみたいなことしないでよ……いつまでもガキ大将なんだから、と香里は内心で呆れた。

「では、お言葉に甘えて」

　多郎は、ちらりと不満そうにする揚羽を見たが、結局は鈴の言う通り、香里の隣に椅子を置く。

「えー、弟くん、ちょっと君、無駄に大きくて香里が見えないんだけどー」

　ぶーぶー文句を言い始めた揚羽を無視して、多郎は弁当の包みをほどこうとしていた。

　何か、多郎ちゃんて、ちーちゃんに似てるかもしれない、強者具合が……。

　険悪さを増してきた昼食の場に、香里の胃はしくしくと痛む。