花の家
これでは、智恵子との昼食タイムを寄ってたかって邪魔されているようだ。

とてもじゃないが、耐えられない。

先生が今朝言っていたように、一度、強く言ってやった方がいいのかもしれない。

でも、強く言うって、どうしたらいいんだろう。

自分の過去を覗いてみても、そんな場面は見つけられそうになかった。

「ちょっと、弟くん、僕の声、聞こえないの? それとも、それだけ図体が大きいと、声が脳に届くのも時間が掛かるのかな」

「俺は貴方の弟じゃありませんから」

「そうだそうだ。バカ蝶々、黙って食え!」

 悩んでいる内に、場の空気は悪化の一途を辿っている。

鈴の台詞は、もう子ども以外の何ものでもない。

我慢しきれなくなって、香里は強く机を叩いた。

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