花の家
「香里が言うなら、僕、表面上は仲良く振る舞うよ。仲良くする!」

 表面上って……。

 冗談のようだが、彼は至って真面目らしい。

「だって、皆、僕が香里と仲良くするの邪魔するんだよ。初めて一緒に昼食とるのに、間に割り込むなんて酷いよ」

 ぐいぐいと多郎を押し退けて、自分の正当性を主張する揚羽に香里は慌てる。

 た、多郎ちゃんの首がとれそうだ……。

「そ、そうだよね。初めてのお弁当だもんね。多郎ちゃん、席かわってあげなよ」

 今のままでは弟も辛いだろうと、言ってやる。

 多郎はひったくりにでもあったような仏頂面になったが、気遣わしげな香里の顔を見ると、渋々、椅子を譲った。
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