花の家
「大体、高校生にもなって、あんな石で遊ぶかっつぅのなあ」

 俺を何だと思ってんだか、と鈴は香里の考えていることも知らずに憤慨している。

 そう言われてみれば、確かに。ただの大きな石だもんね……。

 香里は小さい頃の記憶を辿り、てふ塚の姿を思い描いた。

てふ塚は、子どもの目に、とてつもなく大きく映っていた。

今の香里の背丈くらいは、あったのではないだろうか。

石の周囲に、しめ縄が張られていたのは、鈴のような子どもが登ろうとするのを防ぐためだったのかもしれない。

 あの縄を越えようとして、よく近所のお兄さんに怒られてたっけ。

悪態を吐く鈴に、げんこつを見舞っていた学生服のお兄さんを思い出す。

あれは確か、智恵子の親戚の人で……


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