花の家
 駄目だ、意味が分からない。

 歌の解釈を、香里は早々に放り出した。

「ねぇ、香里。僕の話、聞いてくれてる?」

 遠き日に心奪われていた香里の肩を揺さぶって、揚羽は自分の希望を通そうとする。

断る理由もない。

「いいよ。本当にただの石だから、がっかりするかもしれないけど……」

「駄目だ」

 放課後の約束を交そうとする香里を遮ったのは、弟の多郎だった。

有無を言わせないような、低い声に香里は呆然とする。

「君には聞いてないんだけど」

 怯んだ香里とは違い、揚羽は、多郎に向かって微笑んで見せた。

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