つなぐのは君の手だけ
「大丈夫?」

固まってしまっている私に低く澄んだ声が話しかけた。

「あ、はい。大丈夫です」

私は我にかえり、指が長く大きな手を掴んだ。

その手は私を簡単に起こしてくれた。

「ごめん、怪我はない?」

「大丈夫です。すみません」

同じことしか言えない私に、彼はほほ笑む。

「よかった」

大きな揺れについて謝るアナウンスが、流れる。

電車は、次の駅に止まるため、スピードを緩め始める。

「あ、オレここで降りるから、またね」

ドアが開くと、細い背中は、見えなくなってしまった。

ドアを見つめたまま動かなくなっている私を
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