歌って聞かせてよ。
「わっ!ちょっ…!?いきなりどうしたんだよ…っ。」



慌てた口調でも、抱きついてしまった私を引きはなそうとしない。


それがまた嬉しくて私は腕に力を入れた。



「そんな感動してもらえたの、初めてだ…。」


光輝君は私の頭をポンポンと撫でる。



「ね、これから毎日歌ってよ!」

体を離して顔を上げて言った。

実は全然人間になってから歌を聞けてなかったから、何か物足りなかったのだ。


「ふっ…いーよ。」

光輝君は笑って言った。


「やったぁ!」

また毎日歌が聞ける。



それだけで充分嬉しいのに、もっと嬉しかったのは…


光輝君が私に心を開いてくれたということだ。

バンド仲間の前でしか決して歌おうとしなかったのに。



私にも歌って聴かせてくれた。


それが一番嬉しかったのだ。



そして何日かたったある日…

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