歌って聞かせてよ。
な…治らないって…





どういうこと?








私の頭の中は真っ白になった。


ただ、涙だけが溢れてくる。



「先生に…残りの時間を大切にっ…し…ろ……って………うぅ。」




光輝君は泣いていた。


私の視界はぼやけて光輝君の目をまともに見れない。



どれだけ涙をぬぐっても、次から次へと溢れてくる。



「ちくしょうっ!!」



光輝君は声をあらげて自分の膝を殴った。



私はそんな光輝君の握られた手をふわりと両手で包み込んだ。




「……も…も?」



光輝君が私を見て、私の名前を呼んでくれた。




私は涙でぐちゃぐちゃになった顔で笑顔を作った。



そして、こう言った。













「私…光輝君の歌が、大好きだよ。」










「もし私が死んじゃっても、歌ってくれたら生き返られるよ。」











それぐらい、好きなんだよって。
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