歌って聞かせてよ。
「ふと窓を見たらさ、あの木も中庭に一本しか生えてなくてさ。」








私も実は寂しかったよ。










「でもあの木、まだ小さいのに…すっげぇ真っ直ぐ生えててさ。」







頑張ったもん。


寂しくても、中庭まで遊びに来てくれる人達がいたから。









「見た瞬間、俺もこの木みてぇに真っ直ぐな気持ちで頑張ろうって思えたんだ。」







…そんな風に思ってくれてたんだね。


木の私でも…光輝君の役に立ててたんだね…。




「それからずっと、あの木見て、元気もらってた。」






…私もだよ。










「んで、元気もらってるかわりに大好きな歌聞かせてたんだ。…ほら、木でもちゃんと生きてるだろ?」





「…うん。そうだね。」




光輝君は優しい人。






「はは…木にこんな事思ってるって知ったら、変人みたいに見られるかと思ってたから言いにくくて。」




光輝君は照れたように言った。




「桃が真面目に聞いてくれて嬉しいわ。」



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