歌って聞かせてよ。
自分の木の影に隠れて泣いた。




こんなに悲しくて苦しくて泣いたのは初めてだ。





光輝君に無理をさせているのは…私だった。


私は病気と一緒に光輝君を苦しめてたのかもしれない。



私はうずくまって泣いた。



それから何時間もそこから動かなかった。



光輝君もさすがに診察室からでてきているだろう。



けど、まだ病室には戻ってきていなかった。



…どこにいるんだろう。


心配になって、立ち上がろうとした時…








「…どこ行ってたんだよ。」


光輝君が私の頭を撫でた。



「ずっと探してたんだぞ。病室見てもいねぇし。」




光輝君はため息混じりに私と木をはさんで背中合わせにしゃがみこむ。



「…にしても、ここじゃ見つけにくいわな。」



木の影に隠れていたらしく、病室からは私の事が見えなかったらしい。




さっきから耳をすませていれば、光輝君は咳を無理矢理押さえ込んで、私に気づかれないようにしているみたい。





「…無理しないで。」



そう言った私の声がふるえていた。



もう、耐えきれなくなったのだ。
< 38 / 63 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop