歌って聞かせてよ。
「は?何言って…。」



と言いかけた光輝君に私は抱きついた。




「無理しないでよ。光輝君の事が大切なの…。」




私は泣きじゃくった。

さっきあれだけ泣いたのに、まだ足りないみたい。





光輝君は私の背中に手を回して、そっと抱き締め返してくれた。




「…あと少ししかないんだ。だからせめて…桃との思い出を1つでも多く作っておきたい。」



「俺が歌ってるとき、…すんげぇ幸せそうな顔してくれる桃とか。」



「ただ話してるだけなのに、嬉しそうに早口で話す桃とかさ。」




「俺の話を聞いて笑う桃も。」



「俺が話せなくなったら…。」




ここで光輝君は話を切った。




辺りは静かで、空には星が輝いていた。




「俺…まだまだいっぱい話してぇ。」




「もっとずっと…歌っててぇよ…。」




「この声を失いたくねぇんだよ!」



そう言った後に耐えきれなかったのか、咳き込む光輝君。



…もう…


見てられないよ。
< 39 / 63 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop