歌って聞かせてよ。
確かに俺…今日



一回も咳き込んでねぇ。




でも…治るわけねぇよ。





ガラッ…




「あの…先生…。」



「おや…どうしたんだい?」


俺は色々と説明した。


「ちょっと調べてみよう。」



真剣な顔つきになる。


それにつられて俺もつい手に力を入れてしまう。




「…おかしい。」




おかしい?



「どういう意味ですか?」


先生の驚く顔に少し期待をしてしまう。



「声帯の部分にあった異物がなくなってる。」




「…え…じゃあ…。」



「奇跡だ。治っているよ、光輝君。」



…嘘だろ?





その後、色々検査をしたけど何にも引っ掛からなかった。



それどころか体の悪かった部分全部が治っていた。


ただ一つ、治らないのは桃を失って空っぽになった心だけ。


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