歌って聞かせてよ。
第2章 たった1つの願い。
3月の半ば。

だんだんと暖かい季節が近づいてきた。



「よっ!光輝!元気してるか?」


今日は光輝君の病室に3人のお友達が来ていた。



よくよく話を聞いていると、みんな、バンド仲間らしい。

ワイワイはしゃぐ光輝君を見ていると私の心は温かくなる。



木だけど、心はあるんだよ。




(ふふ…楽しそう。よかったね、光輝君。)


その日の夜。

光輝君は嬉しそうに私にまた、いつものように歌を聞かせてくれた。


(あ…今日はいつもより沢山歌ってくれるんだね。)


「♪〜…」


歌い終わった光輝君は空を見上げ…


「おっ!今日は満月じゃん。」

そう言って満足そうに窓を閉める。





(今日の光輝君、ずっと笑顔だったなぁ。)



作り物じゃなくて、あれは…




本物の笑顔。



(明日になればまたあの笑顔は、おあずけなんだろーなぁ。)




もっと笑わせてあげたい


神様、どうか私に…





私に声を下さい。



< 9 / 63 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop