幸せを探して




当然だけど、蛇口を捻ると水が流れる。




ジャーッと勢いよく流れる音を聞いていると、少しだけ落ち着いてきたように思える。




《パシャッ、パシャッ》




「……………ふぅ。」




キュッ、と水を止めた音に少し笑みがこぼれた。




普段通りの朝だな、って思えたから。




なのに、朝食を前にするとまた気分が悪くなってきた。




「お弁当出来たわよ〜。お母さん、頑張って作ったの。見て、ほら♪」




私がまだ緊張していると思ったのか、お母さんは明るく接してくる。




「豪華じゃん。ありがとうっ!」




心から感謝した。




忙しい朝に一生懸命作ってくれたお弁当と朝食。




なのにゴメンね。




せっかく作ってくれたのに、食べられそうにないよ。




「ごちそうさまぁ。」




「もう?しっかり食べないと……。」




「うん、でもな〜んか食欲ないからいい。」




昔からそう。




緊張すると気分悪くなるんだよね。




なんて私は小心者なんだろう。




着替えをしに部屋に戻った私は、気を落ち着かせようとゆっくり深呼吸した。




さあ、今日が正念場。




よし、いつもは下ろしたままの髪の毛を、今日は結って行こう。




身支度と共に覚悟を決め、お母さんと丁度起きてきたお父さんに笑顔を見せた。




「行ってきます!」




眠そうに、でも笑って手を振るお父さん。




心配そうに、でも笑って手を振るお母さん。




私、頑張るからね。




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