幸せを探して
試験開始
《ガタン、ガタン、ガタン》
最寄りの駅から乗った電車。
私と同じ受験生が何人もいる。
みんな難しい顔をして参考書開いてるけど、私にはそんな事する余裕すらない。
「…………はぁ。」
そういえば、「ため息は出した方が体にいい」って誰かが言ってた気がする。
重い気持ちを発散させている、とか何とか。
「うわ、俺緊張してきた。」
「言うなって、こっちまで緊張するわ。」
聞こえてきた話にまたため息が出そうになる。
不意に耳が痛くなるようなアナウンスが流れた。
私が降りる駅名を言う車掌のしゃがれた声。
帰りたい。
そう思っても電車が戻るはずは無い。
覚悟を決めたじゃないか、チャンスは今日しかないんだぞ。
そう自分を奮い立たせるようにして電車を降りる。
学校まで徒歩五分。
その道を歩いていると少しずつ気持ちが前向きになってきた。
そっか、ここ歩いてるのって、みんな私と同じなんだ。
受かれば同級生になる受験生。
何としても私は合格しなければならない。