幸せを探して

入学式





どうしよう。




周りの生徒は新しい友達を見つけていく中、私はまだ誰にも声をかけられずにいた。




こんな時はつくづく思う。人見知りは損なだけだ、って。




意を決して近くにいた二人に声をかけようとした時、教室のドアが開かれた。




「今から入学式が始まります!A組から順番に体育館に入って!」




きびきびとした女の先生は次のクラスにも伝えに行く。




結局空振りに終わった私の友達探し。




ガックリしつつも体育館へ向かう途中、一人の女の子に肩をつつかれた。




「私、和泉有希(イズミ・ユキ)。よろしくね。」








式が始まるまでの間“あの人かっこいいよね”とか“担任ってどんな人かな”なんて、話をしていた。




「未来、教室で一人だったじゃん?話かけようか迷ってたんだぁ。」




それを聞いて、私はようやく気付いた。




“なんだ、私だけじゃなかったんだ”……って。




話が盛り上がっている中、突然「キィンッ」と耳に立つマイクの音が入ってきた。




いよいよ式が始まる。




私、本当にこの学校の生徒になるんだね。




少しだけ、ほんの少しだけ……大人になった気がした瞬間だった。




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