消え行く花のように
「よし、いいぞ。もうお前は自由の身だ……すきなところへ行け」
足の紐まで解いてやると、俺は少女に背を向け部屋を出ようとしたが、
「ん……?」
着ていたロングコートを牽かれる感触に振り返る。
せっかくかけてやったシーツがずり落ちるのも気にせず、コートの裾を握り締め、少女はじっと無言で俺の顔を見つめていた。
「……行くとこないのか?」
小さくコクリと頷き
「連れて、いって」
消え入りそうな声でそう言う。
「俺は人殺しだぞ?」
「怖くは、ない」
細いプラチナブロンドの髪が、サラリと小さな肩の上で揺れる。