消え行く花のように
(―2―)


「仕事を終えた。確認をよこしてくれ……ああ、確認したら報酬はいつものとおり頼む」

用件だけを告げ通信機を切ると、暖めていたミルクをカップに移してキッチンを後にする。

ビルの地下、窓すらない暗い部屋。普段つけることはないが今日はランプを灯した。

ベッドとテーブルしかない部屋の中、ランプの置かれたテーブル脇の小さな椅子に腰掛けて、ぼんやりとランプの光を見つめる少女にカップを差し出す。

「ほら、飲め。あったまるだろう」

冷たい風が吹く夜道を長時間歩いたため、俺の部屋に着く頃には少女の白い顔は、寒さのためさらに青白くなり、唇は薄紫色になっていたので、俺はビルのすぐ手前の食料品店へ走りミルクを買ってきたのだ。

我ながら『柄にもない』

そう思いながら……

「ありがとう」

そういってカップに口をつけ、しだいに顔色を取り戻す少女の様子を見ながら、向かいがわに腰掛ける。

「俺はジュ―ド・ヴァレンタイン、ジュードでいい。お前の名は?」

「……リエル」

「リエルか、悪くない。帰る所がないと言ったな?親はどうした?」

「わからない……ずっと孤児院で育ったの。孤児院は去年焼かれて、みんなどこに行ったかわからない」

「そうか」

短く答え、俺は口を閉ざした。




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