消え行く花のように



「どうして、あの人殺したの?」

考え事をしていたら不意にリエルがそう訊いた。

「仕事だからさ」

「仕事?」

「そう、仕事。あいつは隣国に武器を横流ししていた。だから軍から殺すように依頼された。依頼されたから殺した……それが俺の仕事だ」

国勢に関わる重犯罪人の暗殺が俺の仕事――

「悪い人だから?」

「そう、だな」

答えながらタバコの火を灰皿に押し付けていると、リエルはふぅん、と小さくつぶやいた。

「どうやって殺したの?」

「ん?」

「あなた、とても速くて、何したのかわからなかった……」

そうだ、リエルは俺が男を殺すのを目の前で見ていた。確かに彼女の目には何がおこったかわからないかもしれない、殺された男すら何をされたか分からないまま息絶えただろう。

「俺は、人とは少しばかり違うからな……」

人間の動体視力では到底追いつかない速さで、俺は男の心臓を抜いたのだ。





< 9 / 101 >

この作品をシェア

pagetop