消え行く花のように
「どうして、あの人殺したの?」
考え事をしていたら不意にリエルがそう訊いた。
「仕事だからさ」
「仕事?」
「そう、仕事。あいつは隣国に武器を横流ししていた。だから軍から殺すように依頼された。依頼されたから殺した……それが俺の仕事だ」
国勢に関わる重犯罪人の暗殺が俺の仕事――
「悪い人だから?」
「そう、だな」
答えながらタバコの火を灰皿に押し付けていると、リエルはふぅん、と小さくつぶやいた。
「どうやって殺したの?」
「ん?」
「あなた、とても速くて、何したのかわからなかった……」
そうだ、リエルは俺が男を殺すのを目の前で見ていた。確かに彼女の目には何がおこったかわからないかもしれない、殺された男すら何をされたか分からないまま息絶えただろう。
「俺は、人とは少しばかり違うからな……」
人間の動体視力では到底追いつかない速さで、俺は男の心臓を抜いたのだ。