消え行く花のように




「吸血鬼も泣くのね?」




ミカエルの声に意識を引き戻されると共に、リエルの体を抱いたまま俯く自分の膝元に落ちて、雪を溶かすものに気が付いた。

ポトリと再び落ちた、透明な……雫。

「消えろ」

振り向きもせず、ただ一言、吐き出すようにつぶやくと

「そうね、出直すわ」

意外にあっさりと、ミカエルはそう答えた。

何故か、先ほどまで身に纏っていたはずの攻撃的な気は、もう感じない。

「大切な子、だったのね」

元は人間だった、戦闘人形。

去り際に残したその言葉には、どこか憐れむような響きがあるようにも思えた。

ゆっくりと遠ざかる足音は、やがて聞こえなくなり……








闇に閉ざされた、音ひとつない世界で







俺は


声を殺し








ただただ小さな体を抱きしめた――





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