愛してるのに愛せない
「そういえば海斗…髪切ったんだな」
最初に食べ終わった兄貴が、俺の髪を触りながら言った。
「あたしが切ったんですよっ」
「彩が切ったの?」
「後ろ髪だけな」
「前髪は?」
「自分で切った」
俺と彩は食べながら話す。
兄貴……そんな触ってると飯食えないからっ!
俺はイタチみたいに背筋をピンと伸ばして食べる。
「海斗……イタチみたいだねっ」
彩が背筋を伸ばした俺を見て言う。
「結構…ツラい…」
「あっ、悪い!」
やっと解放された頭が楽になり、俺は背中を丸める。