愛してるのに愛せない
「いつもありがとうございますっ」
「いやいや。ご飯作ってもらってるんだから、これくらいはしないとね」
「あははっ!それじゃあ、おやすみなさいっ…海斗もおやすみっ!」
「おう。おやすみ」
俺たちは彩が家に入るまで見送ると、家に帰る。
その途中…兄貴が俺に聞いてきた。
「海斗…彩のこと好きなんだろ?」
「ななな…なんで!?」
「フッ…図星だな」
このバカ兄貴っ!
俺をハメやがったな!?
「海斗…?」
兄貴が真剣な顔をしていた。
それは車を運転しているからだと最初は思った。
でも兄貴は寂しそうな顔をしているようにも見えて、俺は兄貴が言う言葉に耳を傾ける。
「ん?」
「お前…俺に気を遣ってるだろ?」
「なんで?」
図星だ…
兄貴の失恋が俺のせいだと思ったら、恋なんてできない…
「気を遣ってなければ、彩と付き合ってるはずだからな」
「……どうだか…」
俺が素っ気ない返事をすると、兄貴は溜め息をついた。