愛してるのに愛せない
次の日、夏祭りの場所に俺たちは集まった。
「彩…浴衣で来ると思う?」
俺と大輝は祭りが行われている会場へ向かう途中で、大輝が不意に聞いてきた。
「わからん…でも俺たちは私服で来てるから、浴衣じゃないことを願う」
「はは…確かに」
そんな話を大輝としていると、だんだん太鼓の音が聞こえてきた。
「あっ、海斗ー!大輝ー!」
彩の声が聞こえ、俺と大輝は声のする方を向いた。
「あっ、いた」
「私服だ。よかったな海斗っ」
大輝が俺の方を見てニヤニヤ笑う。
本当は浴衣の方がよかったんだが…仕方ない。
「二人も私服で来たんだ?よかったぁ…」
彩は安心したように言う。
うん…浴衣を期待した俺がバカだった…
「なんで?」
俺が悪戯っぽく言うと彩は理由を話してくれた。
「海斗の部屋に浴衣がなかったから、絶対に私服で来ると思った」
彩が笑いながら言ってきて、俺は彩に感心した。
まったく…よく見てんなぁ…
「行こうぜ?」
大輝が先に行こうとする。
「待てよっ」
「ちょっ、大輝ー!」
俺たちは大輝を追うように歩きだした。