愛してるのに愛せない


「光太さん…あなたは…その間、いったい何をしてたんですか‼‼」



何もできない自分が悔しくて…悔しくて……涙が浮かんでくる…。



海斗はあたしのこと、よく気付いて心配してくれた…。


なのに…あたしは…!


「彩…落ち着いて…。俺だって守っていたさ。自分の体を盾にして…」

「自分の…体を盾に…?」

「あぁ。どんなに殴られても蹴られても…何かを投げられても…守ったさ…」





堅く握られたあたしの手が解ける…。

光太さんが悪いんじゃない……それどころか光太さんは必死で海斗を守っていたんだ…。




「だけど…ある日、俺が仕事に行っていた間に事件が起こった…」

「事件…?」

「実は…弟がいた…。海斗が小学六年生。弟は三歳だった…」

「弟……海斗はそんなこと一言も…」

「忘れてるからな…」

「そんな…‼」

「話を戻すよ。事件があったのは、海斗の小学校の卒業式の夜だ…。家に帰った海斗が見たのは血だらけの弟と、返り血を浴びた俺の両親だった。そして海斗も殴られ、蹴られ、ボロボロになっていた…」




あたしは言葉を失った。


あたしだけじゃない…。



きっと大輝もレイちゃんも同じだ…。




こんな残酷なこと…あっていいの…?




言葉を失って聞いてるだけのあたしたちに、光太さんは話を続けた。
< 209 / 277 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop