愛してるのに愛せない
飛び出してから、どれくらい時間が経っただろう…。
月が高いところにある。
俺は座ったまま、月をボーっと見つめていた。
思い出したくない過去…。
あの日の惨劇…。
自分より小さい子が死ぬ瞬間…。
すべてが戻ってくる。
「海斗っ‼」
後ろから大声で名前を呼ばれ、俺は振り向く。
「彩…?」
俺を最初に見つけたのは彩だった。
兄貴ではなく…。
「海斗……どこから聞いてたの…?」
彩は息を切らしながら言った。
きっと必死で走りまわってきたのだろう…。
俺は彩の質問に答えることにした。