愛してるのに愛せない
「俺が虐待されてたってとこから…」
「そっか…」
彩は少しずつ近づき、俺の隣に座った。
静かな時が俺と彩に流れる。
それは沈黙と言うよりも、落ち着いているような感覚で…。
まるで癒されているような心地良い感じ…。
俺の中にあった怒りや憎しみは、いつの間にか消えていた。
「俺さ……夢を見てたんだ…」
「夢…?」
「うん…。俺の過去の夢…」
「海斗……もしかして…」
「思い出したよ……たぶん、全部…」
俺は落ち着いて彩に話し始める。
彩はその俺を優しい目で見ながら聞いてくれた。
「俺が虐待されてたことも、弟がいたことも…そして死んだことも…。あの二人も俺の父さんと母さんだ…。」
「じゃあ…光太さんが言ってることは本当なんだね…?」
俺は返事はせずに黙って頷く。
そして話を続ける。