愛してるのに愛せない
「俺が孤児院に預けられて、両親は俺を捨てた。だけど兄貴の親に拾われた。それから一週間も経たずに虐待が始まったんだ…」
「でも…そのときは海斗だけで、光太さんは虐待されてなかったの?」
「虐待はされてないけど…いつも俺を庇ってたよ…」
「そっか……じゃあ、なんで光太さんにあんな酷いことを言ったの…?」
「裏切られたからだよ……今までの嘘…。そして兄貴の親が弟を殺して、俺が殺されそうになった日にも…」
俺は両手を握りしめていた。
気付くと、その手が震えていた。
「海斗…」
俺の名前を呼んだ彩は優しい声だった。
横にいた彩が俺の後ろにいる。
――――ギュッ…
「あたしが…ちゃんと傍にいるよ…。海斗の近くに…いるよ…」
いきなりのことに俺は驚いた…。
後ろから彩に……俺は…。
抱きしめられた……?