愛してるのに愛せない
「海斗…大事な話があるんだ…」
兄貴は俺のことを真剣な眼で見た。
そして、理花さんを見て、再び俺に視線を戻す。
「わかってるよ……理花さんと結婚するんだろ?」
兄貴の言いたいことを俺が言う。
兄貴は驚いた顔をしている。
「なんで…」
「理花さんに聞いた」
そして、この部屋にいる俺の本当にいる両親。
この人たちに俺を引き渡すつもりなんだろう…。
「兄貴。俺は…」
この人たちの…本当の親と暮らせって言いたいんだろう…?
そう言いたかったのに、震えて声が出せない…。
俺は俯いてしまう。
――――ギュゥッ…
彩が俺の手を握った。
俺が彩の顔を見ると、彩は切なそうな顔をしながらも俺を見つめていた。