愛してるのに愛せない
「彩…」
「海斗……光太さんの話、ちゃんと聞こう…?」
兄貴の話を……ちゃんと…聞く…?
「海斗…。理花と結婚する前に、聞いておきたい。本当の親と、俺と理花。どっちに付いて行く?」
「えっ…?」
「お前が決めるんだ…」
「俺が…?」
俺は黙って考えた。
彩はずっと俺の手を握ってくれている。
レイと大輝は黙って聞いていた。
俺は…。
せっかく本当の親に逢えた。
でも…両親に付いていけば兄貴とは別れることになる…。
どちらに行っても待つのは別れ…。
俺はどうすれば……。
「海斗…」
彩が俺を呼ぶ。
俺は無言で彩を見る。
彩も俺をジッと見て何も話さない。