愛してるのに愛せない
彩が口を開いた。
「海斗の選ぶ道に間違いはないよ…?」
彩が放った言葉には、意味が深いような感じの雰囲気があった。
俺はそのとき、考えていたことが吹っ切れた。
「彩…ありがと」
「うん…」
俺は彩にお礼を言うと、兄貴を真剣に見た。
「兄貴……俺は、みんなが好きだよ…」
「あぁ…」
「でも、ずっと俺のことを考えてくれてた兄貴に恩を返すには、ちゃんと成長した俺を見てもらうしかないと思う…」
「じゃあ…海斗…」
「俺は…兄貴と理花さんと一緒に暮らすっ!」
「そうか…本当にいいんだな…?」
「父さんと母さんには悪いけど…生んでくれてありがとう…」
俺は父さんと母さんにお礼を言い、頭を下げた。