愛してるのに愛せない
「いじめはダメだよっ‼」
彩が言った言葉に、クラスの空気が凍る。
そして、クラス中の視線が彩に集まる。
「っだよ彩!いい子ぶってんじゃねぇよっ!」
明日香が彩に向かってキツい口調で言った。
「いい子ぶってないよっ!」
彩も負けじと強気に反論する。
「友美だってエイズじゃないって言ってるじゃん!」
「さぁ?本当にエイズかもよ?」
明日香の周りの奴らはクスクス笑っている。
「そうとは限らないじゃん!」
「でもエイズじゃないとも限らないだろ!」
「明日香は…いじめられる子の気持ちがわからないから言えるんだよ!」
「はは…わかりたくもないよ」
明日香はへらへら笑いながら言う。
「じゃあ…明日香はエイズになっても、ならなくても…いじめられるね」
「なんだってぇ‼?」
激情した明日香が彩に掴みかかる。
明日香に掴みかかられて、胸倉を掴まれても彩は顔色ひとつも変えない。
それどころか、哀しそうな…苦しそうな感じにさえ見える彩の眼を見て、俺は彩の様子がおかしいことに気付いた。