愛してるのに愛せない
「彩…?」
彩の何かが変だと思った。
あの哀しそうな眼、苦しそうな眼…。
とにかく、何かがおかしいと感じた。
「なんか言えよっ!」
明日香が彩に怒鳴る。
でも、彩は黙ったまま冷たい顔をして明日香を見下した。
「お前らっ!そこで何をしてるんだ‼」
生徒指導の先生がたまたま通りかかり、大声で教室に入ってくる。
「…ちっ」
「お前ら、何してたんだ!」
生徒指導の先生に怒鳴られ、明日香は彩の胸倉から手を離す。
「ただの喧嘩ごっこですよ?最近あたしたちの間で流行ってるんですよ~♪」
明日香が無邪気な笑顔で先生に言うと、先生は彩にも確認をする。
「ホントか…?」
「……本当です…」
彩の返事を聞いて納得したのか、先生は教室を出て行った。
「彩…覚えてろよ…」
「何を?」
彩が短く返事をすると明日香はどこかへ行ってしまった。