愛してるのに愛せない
「ありがと…海斗…。話すよ…」
あたしは海斗に背を向けて、階段に座って話し始める。
「あたしが言い返さないのは……返す言葉がないからだよ…」
「返す言葉がないなら、俺が代わりに返してやるよ…」
あたしは首を振った。
「違うよ…。あたしに返す言葉がないのは…本当のことだから……」
「えっ……それって…?」
「あたしは……エイズ感染者なの…」
ザァッと風が強く吹いた。
風が冷たくて、夏が完全に過ぎ去って秋になったことがわかる…。
「彩が……エイズ…?」
「うん……小四から…」
海斗は驚きのあまり、喋らなくなった。
「そして…あたしは、それから人間が信じられなくなって、怖くなった。特に男が怖く…」
あたしは話を続けた。