私はダラダラと部屋に戻る。

好きで部屋を出ているわけじゃない。
これにもちゃんとした理由がある。

勢いよく部屋の扉を開ける。
同室の人達が怖い怖い顔をする。


「人殺し!」


「戻ってくんな!」


手当たり次第に色々なものを投げつけてくる。

それを全部避けれるほど、私は運動神経よくないから。
てか、普通避けられないよ。


「っ……」


頬に鋭い痛みが走る。
頬を手で擦ると、真紅の模様ができた。

果物ナイフが飛んできたみたいだね。


「痛いんだけど……」


床に落ちたナイフを拾い上げ、笑ってやる。

同室さん達は急に、血の気が引いたような顔になって、ナースコールを連打する。

……殺したりしないし。

私は肩を竦め、ナイフを床に戻す。


「……ばーか」


誰にも聞こえないような小さな声で呟くと部屋を出た。

ほら、部屋に戻っても追い出される。

確かに私は人殺しだよ。
けど、見境なしに人を殺す殺人鬼じゃない。
そんな奴らと一緒にしないでよ。


「ばーか」


もう一度呟くと私は病室を出た。

空は生憎の曇り空。
今にも雨が降りそうだ。

病院の前にある時計台を振り返る。
時刻は9時。

白樹一依はいない
もう学校に行ってる。
あいつも一応学生だしね。

あ、なんであいつが私を呼びに来たか?
それは、あいつがここの院長に息子らしいから。
将来ここを継ぐから今から勉強してるらしいよ。

ほんとかは知らないけどね。
全部耳に入った噂だし。

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