桜の咲く頃に
(…っあー)


小林邸の盲目の少女に出会ってから、桜は頭の中がモヤモヤしている。


(このままじゃ追試かな…)


目の前に置かれている教科書や参考書を開くが全く頭に入ってこない。


(早く、返さないとな)


(…水の音に気が付かなかった…)


水。


桜が使った水は山間の雪解け水が自然と流れ溢れるもので、地元民は飲用水などに利用している。


限りなく透明で冷たく、水音すらも透明な水。


(明日…あの水も持って行くか)


モヤモヤを抱えたまま桜は眠りに入った。


机の上の教科書や参考書には手をつけていない。
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