桜の咲く頃に
翌朝は空が高く柔らかな青空だった。


昨日辿った小林邸への道のりを歩く。


茶封筒とペットボトルに入れた雪解け水を持って。


ゆるやかに風はなびき、相変わらず子供達は元気。


路地裏を歩き小林邸に着きインターホンを押す。


…応答がない。


留守なのか?


もう一度押す。


「はーい、こちら側にまわってもらえるかしら」


庭の方から声が聞こえた。


梅の花がまばらに咲き始めた、玄関から庭へと続く道を歩いていくと盲目の少女が縁側に座っていた。


白いワンピースに黒く長い髪。


太陽に照らされ背中に羽根があるかのようにも見える程美しかった。
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