星の祈り
 一息ついたとき、急にテレビの騒ぎ声が消えた。

宇宙空間のようなしんとした空気が私を包んだ。

その静寂を破り聞こえてきた足音。


「じゃあ、お母さんはもう寝るから。友達には早めに言っておくのよ」

リビングのほうから聞こえる声。


「うん」

私ははじけんばかりの笑顔で言った。

リビングから台所は見えないようになっていたから、表情なんて母に見えるわけなかったけど。


 ドアが開き、閉まる。

再び訪れる沈黙。

私はその足音が遠ざかるのを感じてから、ゆっくりとリビングに向かって歩いた。

テレビの前に置かれたソファに腰を下ろす。

すでに私の顔からは、張り付けたような笑顔は消えていた。



 (確かここに引っ越してきたのは中2の秋だから・・・)

考えると、意外にももう3年以上ここに住んでいたことになる。


 ここに引っ越してきた頃は、前に住んでいたところよりも2倍も3倍も田舎で、車がないと生活できないこの町が嫌いだった。

だけど、ある時行った砂丘で、そんな考えは一気に吹き飛ばされた。
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