星の祈り
 その日は、父も母も帰りが遅くなると言っていたから、家の近くにある砂丘に、少し行ってみようと思った。
 
家を出たころはまだ薄暗かったが、砂丘に着くころにはもう辺りは真っ暗になっていた。

前に住んでいた街には明かりがたくさんあったから、そういうことには慣れていない。

とてつもない恐怖さえ感じた。

だけど、歩みを止めることはなかった。


 周りには誰もいなくて、ぴんと張りつめた空気の中を、ただただひたすらに歩いた。


 どれくらい歩いたのだろう。

風が砂を巻き上げる音がかすかにして、耳を澄ました。

その途端砂に足を取られ、黄土色の絨毯に思いっきり突っ伏した。

砂がこすれあう音。

(何やってんだろ、私)

顔面からこけたから、これが町中だったら少し(というかかなり)恥ずかしい人だったに違いない。

誰もいなくてよかったと思いつつ、なんで誰もいないんだろうと思う自分がいて、自分で自分にため息をついた。

そして、そんな考えをどこかへ追いやろうと仰向けになり、頭上を見上げた。


「わ・・・」


 その時の感情を、どう表現したらよいのだろう。

漆黒の深い闇に、世界中の宝石をちりばめたような空。

透き通るようなダイヤモンドがあれば、燃えるようなルビーがある。

その近くには淡く光るアメジストがあって・・・
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